【BOOK】豊かさとは何か？ ⑴ ーラオスの寺院、ベトナムのサンドイッチ

ちょうど１年近く前、カンボジアを旅していたとき、アラサー日本人美女のSさんと友達になりました。
お互い退職して世界をフラフラしている身、すぐに意気投合し、カフェやツアー車のなかで様々な話をしたものです。

そのとき、こんなことを共感し合ったのを、印象深く覚えています。

「アジアの他の国々は日本より貧しいし、生活の快適さも劣るのに、『日本が一番いい国』とか『日本は豊か』とか、言えない……」

そしてそれはなぜだろうかと、お互いの職場での出来事などを話し合いました。

わたしはカンボジアを出た後も旅をして、日本は「物質的に」は豊かだけれど、根源的な意味で豊かとはいえない、そう思いました。
そして帰国後、ニュースを見たり電車に乗ったりしていると、ますます確信をもつことになりました。

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村上春樹の紀行文集『ラオスにいったい何があるというんですか？』というタイトルにあらわれているように、ラオスはエンタテイメントも派手さもないけど何かが魅力的、と思われています。同書の中には

《西欧の寺院には、見るものを圧倒し、荘厳な気持ちにさせようとするところがある。
もちろんそれはそれで素晴らしいのだけど、でもラオスの寺院にはそういう「上からの圧倒的な力」みたいなものはうかがえない。》

とあり、スペインや南米の教会建築の重々しさを思い浮かべると、わたしも同感です。
「何かがある」というより、「何かがない」という点が、ラオスの魅力なのかもしれません。

また、エッセイスト酒井順子も、ラオスで子どもたちと交流したときのことを自著に記しています。

《……決して不幸そうではない彼等を見ていると、様々な疑問が湧いてきます。
生活の近代化は、進めば進むほど良いのか。
子供達は、知識を得れば得るだけ、経験を積めば積むだけ、幸せになるのか。》

《水道も無いラオスの村と、水道水だって十分飲める水なのに、ミネラルウォーターを買って飲んでいる私と。
「ちょうどいい幸せ」というのは、両者のどちらなのか、それとも両者の間のどこかに存在しているのか。》
（『子の無い人生』より）

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私自身、ラオスを含め、東南アジアは豊かだと思いました。
わかりやすいのは食文化。
日本よりも、アメリカよりも、ヨーロッパよりも、豊かだと感じた。

少し話はそれますが、ベトナムのサンドイッチとフランスのサンドイッチを比べたとき、圧倒的においしいのはベトナムのほうです。
それは「安いわりにいい味」ということではなく、たとえ同じ値段であろうとわたしはベトナムのほうを買う。

なぜなら、フランスのサンドイッチは、パンにチーズとハムがはさまっている、だけ。
味も見た目のまま、予測できる。
対してベトナムのサンドイッチはたとえ一種類しかなくとも、そのなかには野菜もチキンも妙な香草などもこんがらがって、いろんなものが入っている。
屋台ごとに味は異なり、売り手のおじさんおばさんも多種多様。

欧米の安定した味のチェーン店も決して悪くないし、リッチなハムがはさまっていることもあるのですが、ベトナムで「今日はどの屋台で買おうかな」と迷うような、楽しさはなかった。

味は店ごとに異なり、気軽に街角で、客と売り手が一対一の関係で対等に買えるということ。
サンドイッチに限らず、これがアジアの味の豊かさでした。

発展や清潔さはないけれど、多様性に豊かさを感じた。
だからこそ、クソ暑くて不便でときには騙されイライラもする、そんなアジアにまた行きたいと思うのです。

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と、東南アジアの豊かさについて書いてみましたが、わたしが自分で考えつくのは実際に体験した食文化どまり。
また、バイクの排気ガスや交通量を思うと、手放しで「東南アジアは豊か！」と言い切る気も起こりません。

「豊かさとは何から感じるものなのか」「なぜ日本は豊かだと思えないのか」というもやもやした問いに、誰か答えてくれないものか。

そう思っていたところ、先日見つけた新書が、道筋を立てて説明してくれていました。

暉峻淑子（てるおかいつこ）著、タイトルはずばり『豊かさとは何か』。

この本を紹介していきたいと思います。

（⑵につづく）

【リンク】
わたしが世界一周中、豊かな食！と思ったのは、東南アジア、ペルー、メキシコでした。
それぞれの味は以下参照（TRAVEL NOTE）。
東南アジア→東南アジアグルメ屋台&食堂メシ編
ペルー→安い・早い・美味い！ペルー食文化主食編
メキシコ→タコス屋台めぐりその２多様性と様式美

カンボジアで会った美女のブログはこちら→イレブンバック